【気になる大学入試問題】#001. 自由英作文添削問題(北海道教育大学)

現役予備校講師である管理人が「おや?」と思った大学入試問題を取り上げていくシリーズを始めていきたいと思います。

簡易的な解答・解説も付けますが、メインは気になった点に関する私の見解ですので、一般的な受験対策とはやや異なることをご了承ください。

どちらかと言えば指導者向けの内容かもしれませんが、生徒や受験生にとっても読みやすいよう心掛けたつもりです。

では、さっそく問題を見てみましょう。

次の英文は生徒が記した「自分の将来の夢」を紹介する文である。あなたが教員だとしたら,英文の文意を変えずに,どのように添削するか。例にならって,それぞれ添削例を答えなさい。なお,英文1文につき,添削個所は1箇所のみとする。但し,その添削箇所が1語ではなく,2語以上に及んでも構わない。また,不要な語がある場合,その語を2重線で消し,下に不要と書きなさい。

(例) Mary have a son. He is resembles her very much.
(例) Mary hase a son. H 不要

I want to be tour guide and introduce Hokkaido to travelers from abroad. I’d love to talk them about many things. I must study English hardly. Actually, I have studied abroad when I was 13 years old, but I’m still not good at English. These days, I often communicate with an ALT in English because I believe the more I speak English, better my English will get.

出典:北海道教育大学 2018年度前期 第4問

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解答例と簡易解説

・tour guide → a tour guide
 可算名詞の単数形にはa/anが必要。

・talk → tell
 目的語と前置詞aboutを同時にとるのはtell。

・hardly → hard
 hardlyは「ほとんど~ない」の意味。

・have → 不要
 when以下が過去の時点を示すため現在完了は不可。

・better → the better
 the 比較級, the 比較級。

気になったところ

単なる文法問題?

解答例の通り、この問題は自由英作文の添削という形を利用した文法問題です。

出典である北海道教育大学では、ここ数年出題され続けているパターンです。

特定の1文を与えて誤りを発見させる問題というのは、昔から主に私大で出題されていますが、このような自由英作文添削というのは珍しい形式です。

自由英作文の負の側面

この手の問題の趣旨は理解できます。英語力を判定するにあたり、文法的な運用力を測定することは特に悪いことではありません。

しかし、私が気になっているのはその体裁です。

自由英作文を添削するほうもされるほうもまさにこれが添削だ、と思っているフシがあるのではないでしょうか。

「これ」とはもちろん、文法・語法を訂正することを指します。

特に添削をする側の意識として、これは強いのではないでしょうか。

私見ですが、日本人はこのせいで英語を話せないのだと私は思っています。

日本人は完璧主義で、間違うことを恐れて話さないのだ、とはよく言われていますが、この手の教育が原因と考えて差し支えないでしょう。

間違った文法を使って話したら減点される、という意識を植え付けてしまっているわけです。

しかも質の悪いことには、よく勉強をする生徒ほどこの意識に縛られがちだということです。

日本の英語学習は近年コミュニケーション重視と言われる方向に転換中ですが、その中核とも言うべき大学入試問題はいまだに文法の理解と運用を重視するものであり、成績の良い生徒ほど完璧主義に陥る可能性が高いのです。

あるべき添削の姿

私も教える立場になってからしばらくの間、添削と言えば文法・語法の訂正だと思い込んでいた時期があります。

しかし、ここまで通じる日本人英語という本を読んだり、知り合う機会を得たネイティブスピーカーとのやりとりなどを通じて、新しい視点が見えてきました。

それは、内容重視の視点です。

具体的には、言いたいことが伝わる限り文法の訂正はしない、という方針です。

英語学習者にとっての自由英作文は、言語習得で最も重要なアウトプットの場です。

まだ喋れない赤ちゃんが、やがて成長し、ついに一言二言何かを喋ったとき、だれがそれを訂正するでしょうか。

もちろん生徒は赤ちゃんではありませんが、自分の言葉として英語を使う機会はほぼありませんから、ほとんどの生徒にとっては初めての発話とそんなに変わらないのも事実です。

それをよってたかって真っ赤に訂正していくことは、知識面での学習にはなっても、発信を促すことにはならないでしょう。むしろ、発信意欲の喪失に一役買う可能性のほうがよほど高いと思われます。

センター試験を始めとする多くの大学入試では文法知識を試す問題も含まれています。

そのためか、自由英作文をその延長上に捉えてしまっている教員が多いのです。

しかし、繰り返しますが、英語学習者にとっての自由英作文は、言語習得で最も重要なアウトプットの場です。

文法を気にするあまり、英語を知っているのに英語が話せないという現状の英語教育はやはり間違っていると考えてよいでしょう。

要するに、アウトプットを取るか、文法知識を取るか、という話です。

答えは簡単です。

アウトプットが先、文法は後。

順番の問題にすぎません。

とにかく最初は発話ができるような学習内容に集中します。

正しい英語だけを繰り返し耳に刷り込み、ロールプレイを通じてセリフとして暗記させる。次第に自由発話が少しでも出るようになるまで延々とこの繰り返しです。

もちろん、最低限の文法知識は習いますが、これもなるべく英語で学ぶほうが望ましいのは言うまでもありません。

ただし、今の英語の勉強時間では、大学卒業時点でもまだ自由発話には至らないかもしれません。

赤ちゃんが話すようになるまでに必要な聞く時間は2000時間と言われていますが、日本の学校だけで勉強する場合、週4時間で10年近くかかります。

※週4時間×52週(1年)=208時間

そして、ある程度自由に発話ができるようになった段階で、初めて踏み込んだ訂正を行うのです。

アウトプットに慣れていれば、訂正を生かすチャンスが圧倒的に多いため、1度の訂正でも飛躍的に英語力が向上します。

文法の指導はしないのか?

非受験生に関しては、文法は文法と読解の授業で扱い、自由英作文の添削では直接触れることはしない、という方針を私はとっています(質問された場合はもちろん教えます)。

ただ、受験を間近に控えた生徒に対しては、今回取り上げた問題のように、細かい部分も含めて文法指導をせざるを得ません。

特にセンター試験に出ると思われる項目や、誤読につながる危険のあるところはかなり細かく指導をします。

これは今の大学受験に特有の問題です。

なるべく早く、本当のコミュニケーション重視の入試に舵を切ってくれることを期待するほかありません。

受験生には本当に申し訳ないと思いつつ、入試に出るからと自分と生徒に言い聞かせ、粛々と文法事項を訂正していくのです。

ただ、受験学年になって文法の訂正ばかりにならないためにも、低学年の、まだ受験を意識しないうちに文法の基礎固めをしておくのは本当に大切なことです。

そして、同時に多くのアウトプットを経験させてあげましょう。その場合は、文法以上に内容重視の添削をして、生徒の発信意欲を高めることを心がけます。

以下に、私の非受験生に対する添削のしかたの例を示しました。

添削の中では基本的に文法事項には触れず、その後の授業で扱う課題としてメモしておくようにしています。

内容重視の添削例

設問文にはこう書いてあります。

『あなたが教員だとしたら,英文の文意を変えずに,どのように添削するか。』

というわけで、以下に私の添削を示します。

〔1文目〕

I want to be tour guide and introduce Hokkaido to travelers from abroad.

I wantは家族や友達どうしでの日常会話ではどんどん使ってかまいませんが、文で書くときはI would likeとしましょう。これはたとえば、日本語の場合、話し言葉では「~やってる」と言うのを、書き言葉では「~している」にするような感覚です。

〔2文目〕

I’d love to talk them about many things.

many thingsの中身はどんなことがありますか?たとえば食べ物、気候、文化などがありますよね。そういった具体的なことをsuch asに続けて、many things such as food, climate, and cultureのように書くと、もっと伝わりやすく良い流れになりますよ。

〔3文目〕

I must study English hardly.

前文との流れがちょっと途切れますね。せめてHoweverを入れて、最後もeven harder(よりいっそう一生懸命に)とすれば、「ツアーガイドになりたいが、まだ勉強が足りない」というわかりやすい流れになります。流れを意識すると内容がぐんと伝わりやすくなりますよ。

〔4文目〕

Actually, I have studied abroad when I was 13 years old, but I’m still not good at English.

not good at Englishだと英語全体があまりうまくない、ということです。謙遜で言っているのかもしれませんが、それ以上に伝わりやすさを重視しましょう。ここではツアーガイドという話の焦点をぼかさないために、at speaking English(英語を話すのが)とすると良いでしょう。

〔5文目〕

These days, I often communicate with an ALT in English because I believe the more I speak English, better my English will get.

ALTが複数いて、いつも決まった先生と会話をしているのであれば、talk with Mr./Ms. 〇〇, an ALT of my schoolのようにしてもいいでしょう(特に決まった先生はいないならtalk with ALTsとすればOKです)。「話せば話すほどうまくなる」は本当にその通りです!どんどん続けてください!応援していますよ。

生徒がまず使わない表現

これはあまり重要なことではありませんが、毎年100枚以上添削している私の視点で見る限り、実際に生徒が犯す間違いとはややかけ離れています。

もちろん問題として出題するわけですし、1文につき1箇所という制約の下で作成されていますので、しかたのない面はあることは重々承知の上で、あえて指摘しておきます。

・from abroad

たいていの場合、生徒はfrom other countryと書いてきます。foreignと書く生徒もいますが、つづりに不安のある生徒はotherとしがちです。

・I’d love to ~

直前に習ったなどの理由がない限りまず書かれることはありません。want toをwould like toにするよう書き添えるのが定番です。また、基本的にI’mやdon’tのような短縮形は使用しないように事前に指導します。

・hardly

文法問題ではときどき出題されるのを見ますが、これに関しては生徒はあまり間違えません。

・I have studied abroad

現在完了形を使う生徒はほとんどいません。ただ、時制に関しては英作文の勉強を始めない限り本質的な理解は難しいと私は考えており、説明に時間を割きたい文法事項ではあります。

・an ALT

冒頭でtour guideにaを付け忘れている生徒が、こちらでは正しくanを付けているのはやはり違和感があります。もちろん、出題者もわかっていると思いますし、問題作成上しかたのないことだとは思いますが。

・because ~

訂正率ダントツはbecauseです。必ず事前に伝えているのですが、becauseから始まる単独の文を書いてしまう生徒が後を絶ちません。この問題の英文を書いた生徒はこの点では非常に優秀です(だからこそ私はここが気になってしかたありません)。

・better my English will get

the 比較級, the 比較級は有名な構文ですから、問題のようにtheが抜けるということはまずありません。実際のところでは、the more I read booksのように、moreの用法を理解していない間違いが多いです。また、このようにgetを第2文型で使う生徒もかなりまれです。

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